■年末恒例の激務でヘロヘロになる。帰りの電車では本も読まず眠るわけでもなくじっと座っていた。

四方田犬彦ラブレーの子供たち』新潮社を読了。

本書は、過去の書物を読むことと未知の料理を前にすることこそが人生の悦びであると信じる、ひとりの批評家によって書かれた、実験レポートである。

と前書きにあるように、かつての文人らが愛した料理や書物に記されている料理を実際に食べてみることをきっかけにして、その人その書物について考えるというものだ。以前から四方田の料理好きは知っていたので(日記本『星とともに走る』の中だったか、スッポンをさばく記述があって驚いたものだ)、なんとも楽しみにしていたのだった。そしてやはりこれがめっぽう面白い。単純に食べ物に関する滑らかな筆の運びにはうっとりとさせられ、「食」への興味を奮い立たせてくれる。開高健の小説に登場する豚の血を材料としたソーセージ「ブーダンノワール」の濃厚な舌触りを想像するだけでとろけそうになる。小津安二郎が愛したカレーすき焼きもぜひ食べてみたいが、すぐにその味に飽きてしまいそうでなかなかチャレンジできそうもない。

■食、料理に関しての鼎談を四方田犬彦福田和也菊地成孔というメンツでやらないだろうか。これは絶対面白いにきまっている。この三者の食べ物についての文章にいつも私はやられている。

ラブレーの子供たち

ラブレーの子供たち