■正月ももう十日だというのに今年最初の日記である。もうこのままやめてしまおうかとちらっと思ったけれどそれはまあ思ったまででこうして書いてしまう一月十日夕方六時過ぎ、正月の決まりの挨拶は止すことにしよう。


■大晦日夜から中央線で二駅先の実家に帰っていた。紅白はほとんど観ていない。テレビをあまりつけていなかった。紅白が終わり「行く年来る年」に切り替わるところはちゃんとチェック。騒ぎのあとの静けさ、膝の裏をかっくんとさせられるようなあの落差が大晦日であることを強く感じさせてくれる。


■今年初の読書は元日に駅前のブックオフの単行本500円均一で買った坪内祐三まぼろしの大阪』ぴあを拾い読み。あとは絲山秋子の『イッツオンリートーク』文春文庫をうまいなあと思いながら読了した。表題作よりも併録されている「第七障害」のほうが良かった。そして織田作之助全集をぱらぱらやって思いつきで「写真の人」という短編を読み、「え?これでいいの?」という拍子抜けする終わり方でいましろたかしデメキング 完結版』を思い出す。実に楽しい。


■正月休みの間、親戚との集まりや友人たちとの新年の会合などあり、すき焼きに寿司にタイ料理とよく食べよく酒を飲んだ。おいしいものを食べ、酒を飲んでいるときが一番しあわせ。という身も蓋もないことをつい口走ってしまいそうになる。


■全国高校サッカーに母校が初出場していたため観に行った。あれは三日か。場所は駒沢。その日箱根駅伝で優勝したのは駒澤大学だった。サッカーを生で競技場でまともに観たのは初めてかもしれない。テレビだと常にボールのあるところしか映らないが、競技場にいれば全体が見渡せるため一人の選手の動きをしばらく追ったり、ベンチでの監督の様子を探ったりすることができておもしろい。スポーツを球技を観に行くことのおもしろさはテレビで映されていないところにある。と言ってしまっても良いかもしれない。


■六日、父母弟と下町を散歩。人形町から深川、木場などを通って門前仲町までゆっくり歩き写真をたくさん撮った。家庭的な大衆居酒屋で四時頃から飲む。ビールはめずらしく一杯でやめにして燗酒ばかり飲み、肝焼きやくじらベーコンなどつまむ。風邪で倒れて来れなかったKにあさりの佃煮をおみやげに買って帰った。


■元日から今日まで本を結構買ったな。今日は立川のフロム中武の古本祭りに行って小沼丹『懐中時計』講談社文芸文庫など買って、恒例の中央線古本屋をめぐる。高円寺、荻窪、吉祥寺。みすずの朝永振一郎著作集一巻『鳥獣戯画』を五百円、尾辻克彦『雪野』を二百円で買えたのが収穫。朝永は科学者、特に興味はなかったがふと手にとって目次を眺めると欲しくなった。「子どもの情景」「武蔵野に住んで」「ねこ」「目白日記」などなど四十篇の随筆が詰まっている。


■今、小林旭を聴いている。藤浦洸作詞・服部良一作曲の「一杯のコーヒーから」がスウィンギンなジャズ調のアレンジと勢いのあるボーカルがグッと来る。

一杯の コーヒーから
夢の花咲く こともある
街のテラスの 夕暮れに
二人の胸の ともしびが
ちらりほらりと つきました

一杯の コーヒーから
モカの姫君(ひめぎみ) ジャバ娘
歌は南の セレナーデ
あなたとふたり ほがらかに
肩を並べて 歌いましょう

一杯の コーヒーから
夢はほのかに 香ります
赤い模様の アラベスク
あそこの窓の カーテンが
ゆらりゆらりと ゆれてます

一杯の コーヒーから
小鳥さえずる 春も来る
今宵(こよい)ふたりの ほろにがさ
角砂糖(かくざとう)二つ 入れましょうか
月の出ぬ間に ひえぬ間に

アキラ 2

アキラ 2



■最後に下町散歩の時の写真。