■先週の水曜日の夜、新幹線に乗ってKの実家へ。静岡県清水市の山の中、川の水が流れる音が聞こえるところにある。まさに田舎。信号が見当たらない。二回目の訪問ではあるが、初めて泊まるということで少々緊張した。Kの家族にはよくしてもらい、のんびりと時計も見ずに過ごし、昼寝などもし、酒を飲み、美味いものを食べ、川で泳ぎ、などをするうち緊張はほぐれ、帰るころにはすっかりなくなっていた。庭で行われたバーベキューでやはり張り切って酒を飲みすぎて次の日はなかなか二日酔いが抜けなくてまいったがそれもまあ思い出だ。

■金曜日の夜、東京に帰ってきてその猥雑で慌しい雰囲気に驚く。数日離れていただけなのにこんなふうに感じるのか。普段は慣れてしまって何も感じないことが不意に現われるおそろしさ、おもしろさ。そういう意味でも旅はいい。自分が暮らすところを見つめ直すために。しかしこう書いていて思うのはどんどん東京から、というか全国的に、猥雑をのっぺりとした書割のようなもので消し去って、「クリーンな街づくり」を進めているように感じるが、それはとてもつまらないしさびしいし危険だ。帰りの車中はちくま文庫種村季弘編『東京百話 人の巻』を読んでいた。