ここ数日のあれこれ

■ここ数日のあれこれを書こう。


■12日。誕生日を迎える。XからパティシエであるXの弟特製の誕生日ケーキをいただく。チョコベースのバナナとナッツが入ったケーキ。注文したわけではないのに僕の大好きなものばかりで作ってくれた。嬉しい。

■昼過ぎ、競馬に行きふたつ当ててプラスマイナスゼロ。前半なかなか当たらずどうしようかと思っていたら、後半盛り返した。潔く帰らなくて良かった。今度の日曜が楽しみになる。

多摩川で、強風の中フリスビーで遊び、くたくたになって鮨屋へ。誕生日を祝ってもらう。


■おもしろいプレゼントをもらった。手作りの紙粘土でできた人形。猫。名前は「ポネ」。

腹の毛は取り外し可能で、それがとてもおかしい。そのうちこいつにひとり話しかける日は近いかもしれない。

■月曜日。午前中に歯医者。早々と終わりバイトまで時間が余ったので、めずらしく昼の吉祥寺をうろうろ。F書店で稲垣足穂『天体嗜好症』河出文庫。たくさんの小品で埋め尽くされている本。ああ、『一千一秒物語』を初めて読んだ時の興奮が再び!と期待している。が、よく見るとこの本はいろいろなところで発表された小品を寄せ集めたもののようだ。ジグソーパズルのように美しく寸分の狂いもなく小品が詰まった『一千一秒物語』とはちと違うようだ。まあいい。

■あとブックの均一で篠田一士『グルメのための文藝読本』朝日文庫。一項一項に添えられた小さく細かな久保田二雄のカットが楽しい。篠田一士の本は初めて。氏のでっぷりとした風貌が気になっていた。獅子文六『コーヒーと恋愛(可否道)』角川文庫。これはめづらしいのか。もうタイトル見ただけでうっとりする。黒井千次たまらん坂』福武文庫。武蔵野の地名にまつわる短編集。たまらん坂は近所なので気になったのだ。


谷崎潤一郎『卍』読了。ひたすら一人称の関西弁の語りでうまいなあとは思うものの後半飽き飽きしてしまった。が、やはり谷崎の小説を読むと当時の風俗が細かく描かれているから良い。


澁澤龍彦『玩物草紙』読了。何物も玩物に仕立て上げてしまう澁澤の「遊び」ごころが堪能できる名エッセイ集だった。僕は前に「澁澤は僕にとってはエッセイストだ」と書いた。それは、澁澤の自意識としては違うだろうと思い、あえてそう書いたのだった。でもそれは僕の思い違いだったようである。

他人からは学者と呼ばれることもあり、また私の肩書はフランス文学者ということになっているらしいから、時に私も学者のはしくれかと気づかせられることがないでもないが、自分では学者と考えたことは一度もない。学問をしているという意識はまったくないからだ。それでは何か、と開きなおられても困るが、まあ自分ではエッセイストということにしている。ほんとうは、明清や江戸の先人をしのんで古めかしく随筆家を名のりたいのだが、これでは世間になかなか通用しないし、そこまで己惚れるつもりはない。
「書物」より。

澁澤が自身をエッセイストだと思っていたことを知って、やっぱりそうかと嬉しかった。これから、澁澤の文章に触れるたびにこの一節を思い出して、なんだかすこし親しみをおぼえることだろう。そういえばもうひとつ発見があって、それは吉岡実の奥さんの父が和田芳恵であるということ。