昨日と今日のこと

大竹伸朗

■昨日は休日で、これからどこに行こうかと迷いながら駅まで歩き、思い立って日本橋に行った。オフィス街にひっそりと佇む小さな画廊、ベイスギャラリーで「On paper 大竹伸朗展」が開催されている。憧れの(と言ってしまおう)大竹氏の作品を目の当たりにするのは初めてで少々緊張した面持ちで東西線に揺られた。今回の個展では、過去20年間に制作された紙作品から約50点が展示されている。使用している紙はすべてイタリアのファブリアーノ社製版画用紙「ロサスピーナ」、サイズは100x70cm。ひとつひとつ額に収まり、壁一杯にきれいに並んでいる。そのシンプルな展示方法は、「演出」からほど遠く、てらいがなく、絵そのものがすっと入ってくる。かといって、絵と寄り添うような気分で眺めていたわけじゃあない。僕と絵は対峙し、大竹伸朗氏の創作への欲望をヒリヒリと肌に感じ、結局僕は僕を見つめることになる。
「おれは何をやってるんだ!」

■この気持ちを持って帰りたいから展覧会のカタログも購入。この冊子、綴じておらず、ひとつひとつの絵がバラバラになるので思い思いに部屋に並べて眺めたり貼ったりできる。重宝しそうだ。

■それにしても大竹氏の絵は色使いがとても好きだ。どこがどういうという説明は難しいけれども「思い切りの良い」より「絶妙な」色使いだ。


■東京駅まで歩き、中央線でずっと座って眠る。電車で眠るなんてめずらしい。それほど、絵に「やられた」のだ。

■東京駅でビアホールを発見。いいねえ、夏ですねえ、庶民ですねえ。


■国立の居酒屋でざっと飲んで帰宅。レンタルしてきたポール・ トーマス・アンダーソン監督『マグノリア』を観る。もう5回目くらいだろうか。何度観ても食い入るように画面を見つめて集中する。とにかくこれ3時間もあるけれどまったく無駄がないと思ってしまうくらい好き。
すべては起こり得ることだし、起こってしまったこと(過去)は消えないということ。
人間はそんな事実にもがき続けるのです。


■今日は雨でした。霧雨でジメジメ。とうとう梅雨がやってくるのでしょうか。洗濯物がたまるよー。なんて、主婦みたいなこと云ってみたりなんかしちゃったり。

深沢七郎『言わなければよかったのに日記』*1読了。
前半の作家たちとの交流を綴ったエッセイがすこぶる面白い。深沢さんのとぼけようは他人を馬鹿にしているようでもあり、どこか韜晦的な匂いがするのもまた僕の好きなところだ。おおいに笑う。
そんな中、氏の小説の特徴をまさに言い表してるなと思う一節があった。

私は自分の好きな情景を書いてみたいだけだ。絵が下手だから、せめて、景色を、絵のように書いて、それが楽しいことなのだ。

僕は氏の小説を「心理や感情を排して傍観者として見つめている。」という見方をしていたから、なるほどなあ、やっぱりなあと思った次第である。

*1:

言わなければよかったのに日記 (中公文庫)

言わなければよかったのに日記 (中公文庫)