■たぶん今までで一番ブランクが空いてしまったかもしれないこの夏休民話の更新をしなくてはと思いながら過ぎていった時間の中にはいろんなことがあった。


■結婚式を谷保天満宮で挙げた。桜はまだ咲いていなかったが、気持ちよく晴れた暖かい日だった。初めて着た羽織袴は身も心もしゃきっとさせてくれた。何枚かタオルを詰めギュッとして立派な腹が出来上がり、いくつものカメラを向けられた。神前式の三々九度で口にしたお神酒が妙に美味しく感じ緊張がほぐれた。呼んだのは親族だけだったが宴の司会やカメラ、引き出物のケーキ、パンを友人に頼み、ウエディングケーキは義弟に作ってもらった。余興なども盛り上がり、加山雄三のあの有名なフレーズを言わされ、賑やかないい時間であった。もう遠い昔のような気がする。


■新婚旅行という名の旅にもいった。そういうことだから飛騨古川の料亭旅館に泊まった。もてなしと部屋の広さ(数の多さ)に庶民な私は驚きっぱなしで浮き足立ってうろうろと部屋の中を行ったりきたりし落ち着かなかったが、カメラを持って旅館内を隅々まで探索し部屋に戻り、風呂に入り、食事の時間ともなればもうすっかり緩んで舌鼓をポンポンと打つのだった。


■なぜ飛騨に行くことにしたのか、きっかけは同じ岐阜県は養老にある荒川修作設計の養老天命反転地に行きたかったからだ。そしてまた岐阜県といえば、小島信夫の故郷でもあった。


■二日目に高山からバスで岐阜駅に行き電車で大垣、それからのどかな小豆色のローカル線養老鉄道に乗る。車内アナウンスで「おタバコはしばらくごしんぼうください」っていうのがすごくよくて笑った。ひょうたんぶら下がる養老駅に着き、ろくに地図をみないで歩いていたら人がぜんぜんいない田舎道をさまよってしまい、「田舎に泊まろう」気分になる。村人AとBを発見し道を教えてもらいやっとの思いで到着。すり鉢状の公園が見えてあっという間に疲れが吹っ飛び、身体と頭をいっぱいにつかい遊び駆け回った。









■そして夜は名古屋で一泊。三日目、鶴舞の古本屋を回れば、高橋悠治の『たたかう音楽』晶文社、『ロベルト・シューマン青土社を定価以下で手に入れることができ大満足。駅の近くの公園の桜の花は東京よりも一足早く満開で出店もあり賑わっていて思いがけず花見酒。帰りの新幹線では矢場とんのとんかつ弁当。


■旅には保坂和志『小説の自由』を持っていった。