■そして、また、間隔があいてしまった。



■昨日は休日。Kの弟のYくんが落語に興味を持ちはじめたので寄席に連れて行ってやる。誕生日祝いもかねて浅草に遊びに行った。連れて行ってやるといっても私だってまだ寄席には一度しか行ったことがない初心者。そのときは末広亭小三治志ん五と川柳を観て興奮した。浅草演芸ホールは初めて。昼過ぎに神田で待ち合わせ銀座線で田原町合羽橋で包丁を物色。YくんがKに、これまた誕生日プレゼントとして、名前入りのぺティーナイフを買ってやっていた。たくさんの包丁を前に目をパチクリ。先端恐怖症のわたしは包丁の尖った先が恐ろしい。


浅草寺で手を合わせ、神谷バーで一服。ポツンポツンと適度な間隔を空けて座って飲んでいる爺さんたちの表情、佇まいをつまみに黒ビールをチビチビやる。昼間の酒は旨い。いや、いつだって旨いけれど…。店を出てもまだ明るいというのがいい。意気揚々と浅草演芸ホールへ。午後3時半過ぎに入場。金馬に間に合った。楽しみにしていた川柳はあっさりとしたものだった。「ガーコン」は明日演るらしい。残念。のいる・こいるを生で初めて観る。おなじみのあの適当な相槌芸は本当におもしろい。あれで押し通してしまうのがすごい。トリの歌之介の畳み掛けるような勢いに唸る。また気になる噺家が増えた。


■終演後外に出ると浅草は閑散としていた。雷門の前、前を歩いていた地元のひとらしいおばさんが不意に門のほうにさっと体を向けて手を合わせていたのが目に焼きついている。ずうっと昔から毎日続けていることがその動作からは窺い知れた。なにか見てはいけないものを見てしまったという思いと美しいものを見たという感慨が混濁し一種の興奮状態に陥った。だからというわけではないが、調子に乗って天丼を食べて、帰った。

浅草寺をお参りし、神谷バーで飲み、寄席で笑い、天丼を食べて、帰る。わたしはご隠居さんか、と思わないわけではない。