賑やかな靖国

今まで、靖国神社というと「軍国主義」の象徴のように解釈していて僕とは無縁の場所だと思っていたが、本書を読んでおのれの不勉強を恥じることになった。靖国神社を語るとき、今日では、政治の思惑や戦争の責任などが持ち出されるのが常だが、本書は靖国を日本にとって、東京にとって、純粋に場としての「機能」や「歴史」について分析する。かつては庶民に愛され、多くの人が集まる賑やかな場所であったようだ。成り立ちから、その周辺の風景の移り変わり、政治家や作家、そして庶民がどのように靖国を扱ってきたかを過去の記録や文学作品にあたり丁寧に記された本で、日本の近代史を知る上でも読む価値のある一冊だと思う。