休日給料日

解剖学教室 1958 銅板

■昼過ぎ、タモさんが昼の仕事を終えた頃のそのそと起き上がる。今日も気持ち良い晴天。洗濯物を片付けて八王子へ。公民館の休憩所のような地元密着感を漂わせているドトールで一服して八王子市夢美術館に行く。20世紀後半に活躍したドイツの画家ホルストヤンセンの展覧会、副題に「北斎へのまなざし」とある。銅版画の作品、特に何枚も展示されていた自画像に注目する。儚さと強靭さの同居したタッチが最近聴いているLoren Mazzacane Connorsと印象が重なる。またその自画像の顔が、北斎に倣って「画狂人」と名乗ったことが実によくわかるある種「醜い」とも言える容貌で彼の人生、そして表現者としても影響を与えたことだろうと思わせる曰く云い難いアウトサイダー的なパワーに満ちていて面食らってしまう。彼が影響を受けた人物としてポー、ニーチェレンブラント、とい顔ぶれが挙げられていて(ヤンセンによるその三者肖像画も展示されていた)、実に納得できるなという印象。

■人も少なく、なかなかいい時間を過ごした。北斎の作品も展示されており、とにかく色が素晴らしいと感嘆しきりだった。でも北斎のあの色は当時のものなのだろうか。実に状態が良いので疑ってしまう。版画だから元が残っていれば刷れるからねえ。あの藍色は画集で見るのとはまったく違う、目の前にしてはじめて味わえる色だった。

■八王子の隠れた(?)古本屋S書房に久しぶりに行く。様々な本が雑然と積み上げられ埋もれて眺めることができない棚がたくさんあり掘り出し物の予感を常に抱かせる店だ。時間をかけて探すところころ良い本が出てくる。坪内祐三さんが愛読していることでその存在を知ってずっと探していた谷沢永一『完本 紙つぶて』とその続篇『紙つぶて 二箇目』を掘り出す(文字通り積み上げられた本で隠れていた本棚から見つけ出した)。共に文藝春秋刊の函入り本。735円と525円こんなに安いものなのだろうか。嬉しい収穫。


■立川でパソコンデスク用の小さなホットカーペット、その他もろもろを購入し、国立ニチニチへ。行くと客が1人もいない。八時くらいに行ってこれはめずらしいこと。賑わうことを願いながらたくさん食べて飲む。特に、五目チャーハンのぱらぱら、砂肝の醤油煮の微妙な歯ごたえと水餃子の皮のもちもち感に感動。麦酒2杯温かい紹興酒2杯。気分良く酔っ払う。僕らが飲んでいるうちに心配していた他のお客さんも次々やって来て、7組やって来て5組見送る。つまりは長居していたわけだ。ついつい長居してしまう、そんな飲み屋がニチニチだ。