長い一日

awayama2005-11-04

■きのうは何をしていただろうか。長い一日であった気がする。早起きをした。早起きといっても八時くらいであった。普段より早い電車に乗り、吉祥寺へ。ドイツパン屋でクリームチーズとソーセージが挟まれたサンドイッチともうひとつスティック状の固いパンを買い求め、バウスシアターの初回に駆けつける。テオ・アンゲロプロスの特集上映で『エレニの旅』。

■冒頭、馬車が映し出される。集落に入って行き、川辺にたどり着き止まり、そこに船が着き、その船から陸に上がった女が馬車に乗り、集落の中で一際大きい屋敷へ入っていく。その模様がワンカットで収められている。カメラは遠くにあるようで集落全体を俯瞰するような視点。単純にその視点、撮り方に感動して、ストーリーのことは気にせず、混沌を遠くから静謐に見据えるその映像に終始見惚れていた。海の上の葬儀のシーンは本当にきれいだった。全体的に退いたカメラが印象的だ。


■ご自由にお持ちくださいという札が掲げられてあり、つい疑ってしまった雑誌『風の旅人』の14号を持って、珈琲。映画の後はこれに限る。『風の旅人』は執筆者が実に豪華だ。保坂和志白川静川本三郎のエッセイを味わう。白川静は自身の書き文字がそのまま載っていた。


ハモニカ横丁を歩いていたら、八百屋のおじさんがりんごを配っているところに遭遇。渡されぬまま通り過ぎてしまい僕にはくれないのかと少々さびしい気持ちでいたら、後ろから「おにいさん!」と一声。りんごを放ってくれて、見事にキャッチ。なんだか興奮する。


■たい焼きをかじって秋葉原へ。よく考えると降り立つのは初めての街。近頃何かと話題の街には、やはり想像通りの人々がいた。というか探した。



秋葉原グッドマンへ。岸野雄一率いるWATTS TOWERS 秋のコンサートへ。

入場時にドリンク代1000円をお支払い下さい。チャージは観てのお帰りに、あなたが今までご覧になったコンサートの印象と照らし合わせて、納得のいく金額をお支払い下さい。

という投げ銭方式はとてもスマートでかっこいい。客が何人呼べるかが問題ではないのである。観に来た人にどれだけ満足してもらえるか、ということが重要なのだ。これはとても本質的な芸能のあり方だと思う。
前座はトクマルシューゴ。彼の在籍するバンドの演奏はよく聴きにいっている。メンバーに友人がいることもあって、飲みの席では顔を合わせていたことはあったが、ソロの演奏を聴いたのは初めてだった。まずギターの巧さに舌を巻いたが、その巧さが嫌らしくなく必然として響いていて特異な才能だと感じた。曲と曲の間もノイズなどを使って極めてデリケートに次の曲へと繋げていて、組曲という印象が強く、その演奏中は独特の空気が漂っていた。
DJはECD。歌謡曲を中心に回していた。ジャックスの『からっぽの世界』を女性が歌っているのが流れていて、あれは誰だったんだろうと今頃になって気になっている。その場で聞けばよかった。帰ったら荒木一郎を聴こうと思った。
そしてお待ちかね岸野雄一率いるWATTS TOWERSの登場。もう前にも書いたかもしれないけれど岸野さんのコンサートにはやられっぱなしである。あんなに今にも駆け出したくなるくらいのウキウキ感で一杯になるコンサートは他にない。「ファンタジックでポップなお茶の間スペース・ロック・オペラの決定版!! 」というコピーは大げさではない。いまだ興奮覚めやらぬといった感じで何度も頭の中で思い出してリピートしている。

■コンサート半ばに登場した気ぐるみのウサギちゃんにたくさん飴を貰って、たくさん撫でてやった。

■コンサート中、社会の窓をおっぴろげてはしゃいでいたようだ。通りで周りの視線が下に…。


■一緒に行ったXとXで終電まで麦酒ばかり飲む。高校の後輩であり、これから自衛隊に勤める友人からとっておきの裏話を聞いたような気がするのだが思い出せない。なんだか気分良く酔っ払ったなー。