■年が明けて六日、すっかり正月気分も去った。年末年始何をしていただろうかと頭を抱えながら備忘録を書きつけてみよう。


■31日午後六時に仕事を納め、気分は走るようにそわそわと帰宅し、隣人のJさんも交え妻と三人で紅白歌合戦を最初から最後まで鑑賞。女ふたりはしきりに司会の松下奈緒にダメ出し(とくに衣装に)をしていておかしかった。一番感激したのは本編の間に挟みこまれた熊倉一雄によるゲゲゲの鬼太郎の歌で、おっとりとしたおじいちゃんが出てきたなと思ったら、あの独特の粘り気のある歌声が発せられ釘づけとなった。絶妙な間合いの節回しが少々遅れ気味に感じ一瞬緊張感が走ったものの、紅白という番組を一瞬忘れさせる不思議な時間だった。
毎年恒例の紅白が終わって「ゆく年くる年」に変わる瞬間のあの落差を堪能し、Kのおばさん特製のそばをすすって感嘆の声をあげているうちに「あけましておめでとう」のときが来る。


■元日はKが年末に実家から持ち帰ってきたものを中心にこしらえてくれたおせちを食べて日本酒を呑み気分をよくして、Kデザインのうさぎを年末ぎりぎりにもくもくと彫って刷った年賀状にやっと筆を入れ、昼過ぎに谷保天満宮へと出かける。着いてみると鳥居の外まで列が続いていて、実家での親戚一同との宴の時間が迫っていたため、元日に拍手を打たなかったことなどあっただろうか思いをめぐらしつつ踵を返す。
宴はハイペースに賑やかに進行。いとこのビールペースがずっと変わらず座敷には空き缶がずらっと並べられて壮観。途中でビールが足りなくなり自転車で買い出し。一緒にスナック菓子なども買って、学生飲みかとおかしかった。


■2日は今度は父方の親戚たちと近所の大衆的和食屋で午前中から宴。午前中の瓶ビール。注ぎ合ったりしてこれぞ正月と感慨にふける。
電車に乗って三鷹。コース料理で腹一杯、少し酔った体を落ち着けるべく住宅街を縫うように歩いて向かった先は祖母が入院している病院へ。会うたびに元気になっているので安心し、あたたかい食堂でのんびりと話をしてすごす。心地良い眠気におそわれる。こういう場所での正月もあるのだ。
吉祥寺に出て人でごった返すヨドバシカメラに行くも、物色したのはひと気のない髭剃りコーナーとパソコンマウスのコーナー。特に不便はなかったのだけれど、あまりににも安すぎる髭剃りを使っていたのを不憫に思っていたKになんとなく言い負かされて、ある程度の髭剃りを購入。なんでこのタイミングにと思うがこれも正月。
帰って遅すぎる年賀状書き。そしてNHKの坂本龍一「スコラ 坂本龍一 音楽の学校」の一挙再放送を長々と再見。


■3日。午前中にやっと初詣。列は短くすんなりと参拝。おみくじは末吉。うーん。
午後、日比谷で映画鑑賞初めは「ゴダール・ソシアリスム」。コラージュ作品のようにいびつに繋がれてゆく映像と音がなんと美しいことか。一度観ただけではわからない。「わからない」ものを「つまらない」といって遠ざけてしまうのは実にもったいないことで、「わかる」「わからない」などというのはたいした問題ではなく、簡単に消費されるのを拒むような作りから醸しだされる攻撃性にとても刺激され、実に痛快な時間だった。
夜、武蔵小金井の赤札屋で、安くてうまいつまみをもりもり食べつつ、ビールとトリスハイボール。正月休みのしめにぴったり。