■七日木曜日は、年末に現地に着いたら休館日だとわかり途方にくれた向ヶ丘遊園岡本太郎美術館へ行く。目当てだった「対照 佐内正史の写真」展はだだっ広い部屋に長い台が設えてあり、その上にサイズも様々な膨大な量の写真がずらり列をなしていて、それらを直接手にとって観ることができるという展示方法がかっこよかった。私は写真を眺めながら台の前を一定のスピードで歩き、気になったものがあれば立ち止まり凝視しまた歩き出す、ということをささっと行い一通り観たのち、あらためてもう一度観たい写真のことを考えた。それがどこにありどういうものだったかは思い出せずぼんやりとしているのだがしかしそれは確実にどこかにあるのだった。それで今度は写真の並びを無視し、ぽつぽつと思いつきで写真を観ていく。するとあれこれとまた観たいと思っていた(であろう)写真にたどり着くのだった。佐内正史の写真には風が吹いている。
そして自主制作の写真集は変なつくりのものばかりでやられた。今回の展示で私が佐内から受ける印象が大竹伸朗から受けるそれと近い気がした。

岡本太郎の常設展も面白く観た。美術館の構造が凝っていて、大小高低さまざまな部屋がつながっていたり、隅に小さな小部屋があり作品がひとつ展示してあったり、穴を覗けば別の部屋が見えたり、ただただぶっきらぼうにひとつひとつの展示室を区切ることをせずになだらかなグラデーションでつながっていて、美術館としての工夫が感じられた。私がいた時間は人が少なく、ところどころに置いてある岡本太郎等身大パネルや人形にいちいちビクッと反応してしまった。


■その日の夜は吉祥寺で安カレーを食べた後バウスシアターで松江哲明監督『ライブテープ』を鑑賞。2009年の元旦に吉祥寺で撮影したワンカット74分を観る2010年1月7日の私は大変興奮していた。私にとってなじみのある街のなじみのある道が映し出される。そんな場所を歩きながら歌う前野健太という音楽家がうらやましかった。あのサングラス越しの吉祥寺はどんなふうにみえるのだろうか。街の記録としても面白かったし前野健太の歌が吉祥寺という街と同様にとても好きになった。