■またひさしぶりの更新になってしまった。もう九月。心地良い陽気とともに過ぎていく。


■四五年はやしていた髭をさっぱりと剃ってみた。老け顔がすこし若くなったようである。しかし会う人にはあまりすぐには気づいてもらえないのが悔しい。少し時間がたって「あれ?そういえば…」ということになる。剃るときすこし手が震えた。これは先週の金曜日の夜のことだ。その次の日の昼はひさしぶりに西部古書会館に行ったのだった。ほんとうは所沢の古本祭りに行こうと思っていたのだが始まりが遅く、仕事に間に合わないため高円寺にしたのだ。初日ということで混雑していたので空いているところを転々としながら物色、棚を順番にじっくりみることは出来なかったが、いろいろ目ぼしいものを見つけ満足。読みたかった草森紳一の『随筆「散歩で三歩」コンパクトカメラの冒険』話の特集を、状態も悪くないのに二千円で見つけたのは嬉しかった。

■木曜日はKと鎌倉に出かけたのだった。午前十時半頃に鎌倉駅に到着し、まずは鶴岡八幡宮を参拝しふらふらと古本屋三軒を冷やかすも、結局永井龍男の随筆集一冊しか買わず腹がヘリ、おざわの卵焼き御膳に舌鼓を打ち元気が出て、電車で逗子駅に向かいバスに乗り、海辺の町の風景をじいっと凝視し、葉山の美術館の前で降り、秋野不矩のインドを描いた大きな絵を見て立ち尽くし、景色より遠くのことを思い、すぐ近くの海の家が解体されている最中の砂浜に行き、Kと話し、またバスに乗り駅に戻り、今度は江ノ島に行き、歩き、汗をかき、猫とたわむれ、露天でイカ焼きを肴にビールを飲み、江ノ電に乗って再び鎌倉に行き、鳩サブレを買い、帰宅。

■そしてこの前の日月火はKの静岡の山奥の実家で過ごす遅い夏休み。Kの妹の赤ちゃんにもあいさつ。かわいくてずっと見ていても飽きない。やわらかそうなところをさわる。眺めのいいところへ連れて行ってもらったりもしたが、なにせどこにいても眺めはいいのだから気が抜けない。普段過ごしているところとはまったく違うのは、たとえば色。木の葉の緑、川の水の青、空の青、雲の白、そして日が落ちてからの闇の黒。「彼方からの手紙」を頭の中でループ。

「川の始まりって?」などというような素朴な気持ちになり思索にふけるのにはもってこいであるし、また、「お腹空かない?」と問われれば、イエーという気分でモリモリと美味しいものをたくさん食べるのだった。それはいろんな意味で健康的で、単純に言えば余計なものがないということであるように思う。川の水が流れる音と虫の声に包まれながら庭先でバーベキューをして皆でだらだらと話しながらビールを飲む。この夏初めてのきっと最後のちょっとしたフェス気分を味わったいい三日間なのだった。