■ビニール傘を使うときに引き起こされる悲劇といえば、やはり、自分の傘がどれだかわからなくなったり、なくなることだろう。わからない、なくなったからといって適当に持っていくことは私にはできない。それはその持ち主にとってかけがえのない、特別な傘かもしれないからだ。ビニールだからってバカにしちゃあいけない。さて、そこで私は自分のビニール傘を傘立てに置くとき、工夫を凝らすことになる。いかに目立たせるか。他のビニール傘との違いを見せつけるのだ。角に置いたり、傾けてみたり、きちんと閉じてみたり、雑に置いたり、すこし離れたところに置いてみたり。その傘立ての状況を瞬時に把握をし、あるべき姿を模索するのだ。

■しかしそんなことをしてもわたしの傘はどこかに行ってしまうのだった。