■日曜日は例のように競馬に行こうとおもっていたが、前日の夜、嫌な寒気がし震えがとまらなくなった。風邪の症状だ。この震えはやっとのおもいで湯船に入ってもおさまらず、気が滅入った。しかし、風邪をひくのは悪じゃない。思いっきりひいてやろうとおもった。うんと熱を出して治ったときの爽快感、身体が生まれ変わるような感覚をもう何年も味わっていない。大人になると何かと忙しく無理に治してしまう。それはとてももったいないことだ。そういうこと(だけではないけど)が書いてある野口晴哉の『風邪の効用』をぼくは愛読している。

■日曜は競馬に行くのはやめにし、家で静養しようと心に決めて、正午過ぎまで布団に入っていた。熱は少ししか上がらず、汗もかかない、ただ寒気と腹痛がひどい。それでも腹はへる。あいにく同居しているKは帰ってきていないので、自分でお粥を作って食べる。そしてやっぱり競馬が気になる。ノイズがすごいAMラジオを聞きながら、ネットで馬券を購入。みんな外れた。そんなことをしていると出かける気力がでてきて、吉祥寺まで行く。いくつか古本屋に行き何も買わずに歩いているとやっぱりふらふらと倒れそうになるので、目的の買い物、羽毛布団を無印で買ってさっさと帰宅した。そういえば、近所の古本屋で昔の現代詩手帖「サティー特集」を買ったんだった。


■暖かい格好をしてソファでじっとKの帰りを待ち、帰ってくると一緒に近所のスーパーまで買い物。湯豆腐が食べたかったのでその材料を買って、帰って、食べる。足湯をして布団にはいったのはまだ12時前で、これはぼくにとって奇跡的、しかもこの日は酒をのんでいない。

■これでもう今はいい。治ってしまった。というか、熱もそれほどでなかったし拍子抜けだ。なんだか「ごっこ」をしたみたいだなと思うが、そのときはそのときでとても真面目に風邪に取り組んでいたのだ。とにかく思い切り発熱してすっきりとしたこころとからだにしたいものだ。


田中小実昌『世界酔いどれ紀行 ふらふら』知恵の森文庫、を読み終える。この文庫シリーズで田中小実昌の本があるのは驚いたな。普段は縁がないシリーズ。しかしとてもいい本で読み終えるのが嫌なほどだった。どこの国に行っても昼間からふらふらと酒を飲み、バスを見つければ行き先など気にせずふらふらと乗って終点まで行き、観光地なんて目もくれず、その土地の墓場と刑務所に赴く日々の記録。なんだか自分も同行しているかのような気になり、すこし酔っ払って宙を漂うような、そんな気分の良さにつつまれて読んでいた。