談志

■昨夜ワールドカップ日本戦の裏番組『情熱大陸』を観た人はどれほどいたのだろう。談志が出演していたのだ。もっとも談志好きの者はワールドカップで盛り上がったりしないのかもしれない。談志本人はもちろんこのワールドカップ熱を茶化している。世間の目が一方を向いていたら談志はその反対から見て本質を見極めようとする。


■僕はサッカーを観た。情熱大陸は録画して観た。談志はとてもかっこよかった。安定することなく、常に真剣に芸のことを考え、悩み、試行錯誤し、時に、客を挑発する70歳の芸人がいるだろうか。胸を打たれた。自分は何をやっているんだろうかと触発される。


■前に談志が若手のお笑い芸人のコントを評するのを観たことがある。談志は「つまらない」とすこし苦渋が滲んだ表情で言った。つまらないけれどもこれは私の感覚で、こういうものが若い人は好きなのかもしれない。私が古い人間でわからないという場合もある。という風なことを言っていて、ただ、上から「つまらん!」と一喝するだけじゃなく、ある種の葛藤を抱えてものを言う姿勢を観て、僕はとても談志を好きになった。あと、談志が昔の映画や歌謡曲や芸人について語る姿はとても無邪気でチャーミングでこっちまで嬉しくなってくる。