ブナ

■昨日は何をしていたのだろうか?もう十月か、時が経つのは早いなあ、と毎月始め恒例の感慨を洩らしていたことを憶えている。



■今日は休日。昨夜から用意してあったスポーツ新聞を眺める朝。日曜といえば競馬に行くのだ。国勢調査を提出し、布団のシーツなどの大物を洗濯して、キムチチャーハンを作って食べて出掛ける。



■9レースから参戦。なかなか当たらず苛々が募り、焦り、会場をうろうろ。ひとつのレースが終わるたびになんとか流れを変えようと思いフロアを変える。こういうある種のジンクスを担ぐような行動をしている人が賭博の場には多い。ある一人をじっくりと観察しているだけでも面白く、日は暮れてしまうだろう。なんとかプラスマイナス0まで持ち直し、もうこれで帰ることにするか、と見切りをつけてしまったほうが良いような予感はあったものの、最近調子良いことを思ったら変に色気好き、いかんなあ…、と思いつつもこの後のレースも買うことになった。しかしメインレースも外し、最終12レースの森に迷い込むことになってしまう。ここまで粘ることはほとんどないことなので、無理やりに引き寄せたのだろうか最後の最後で当てた。一晩充分に美味い酒を飲めるくらい儲けた。


■さてどうしようかと考えるのもつかの間で、気づくとすでに向かうところに向かっていた。古本屋だ。


■先ず荻窪S書店。均一棚で花田清輝『鳥獣戯話』、吉村昭『破獄』、小島信夫『うるわしき日々』。店内でスーザン・ソンタグ『反解釈』。小島氏の著作が均一で見つかるとは思いもしなかった。少々カバーに難があったからだと思うが問題なし。まったく、嬉しい。これだから古本屋通いはやめられない。店内には最近仕入れてきたらしい小島氏の著作がずらり。見た事もないものがいくつかありじっくりと味見。『反解釈』はいまさらと云う感じもしますが、坪内祐三氏がむかし影響されたという一説を目にし今とても読んでみたいのです。少しづつじっくりと取り掛かろうと思います。


■吉祥寺に出たのは七時過ぎ。腹がぐうとなったので、カウンターだけの小さなカレー屋「リトルスパイス」へ。メニュウを渡そうとするのを制して威勢よく「ブナ!」と一言。砂肝とレバーがたっぷり入った黒いカレー。僕はこのカレーの完全な虜である。適度に辛く、汗を滲ませながら、砂肝の歯ごたえとレバー独特の濃厚な味わいは酸味が強めのルーにとてもマッチしていて、また、さりげなく添えられたパクチーがあることが食欲を刺激し、飽きが来ないしペロリと平らげることができる。夢中になって食べた。食事中、皿の上しか見えなかった。世界は僕とカレーだけだった。掃除をするようにふき取るように最後の一口を集め惜しくも口に運び、ごちそうさま。


■ああ、これを書きながらも涎が出てきた。


■そして、気分良くF書店。するとありましたありました。岡谷公二『郵便配達夫シュヴァルの理想宮』のハードカバー。今は河出から文庫で出ていますが、宮殿の写真とか図録がたくさん載っているので、是非大きい版で欲しかった。初めて見たよ。あと、新潮10月号を購入。多和田葉子の新作が載っている。けれど先ずはいつも楽しみにしている大竹伸朗氏の連載と「バ  ング  ント展」について書かれた椹木野衣の連載を帰宅後姿勢を正して読んだ。

■「バ  ング  ント展」について考えた日の日記。