■風邪は落ち着いた。吉と出たらしい。


■終日雨が降っていた。中途半端にだらだらと降る雨で、今日一日、気分もそんな感じであった。


■帰り道、線路の工事で国立まで電車が届かず、臨時のバスに詰め込まれて帰った。バスにはめったに乗らないので気分は高揚し、曇っているガラスを拭き拭き外を眺め目を遊ばせた。


■いやに張り切っている駅員たちに導かれバスに詰め込まれていく様はなんだか「収容」という言葉を思わせた。僕は落ち着き払い、でも少し苦笑しながら収容された。


川上弘美『蛇を踏む』読了。文芸誌や雑誌などでちょこちょこと目を通していて好感を持っていたものの、本でしっかりと読むのは初めてだった。「蛇を踏む」「消える」「惜夜記」が所収されている文春文庫。

■それぞれ、一行目の掴みの鋭さが印象に残った。不可思議な物語に入り込むことに苦労せずに読めたのはあの一行目のおかげかもしれない。夢(文字通り眠って観る夢のこと)のような小説でそこに何かの寓意を捉えて読むことなんかせずにまさに夢を観るように読んだ。「惜夜記」は19編の小品から成っていることもあって稲垣足穂の『一千一秒物語』を思わせた。