ハッピネス

■後方から湯が浴槽を埋めていくジャブジャブという音が聴こえる。と、書くほどに普段は気に留めない音が今夜は良く聴こえる。

■さっき久しぶりにヘッドフォンをしてじっくり音楽を聴いたためであろうか。開け放した窓の外からも様々な音が聴こえる。

■グラウンドゼロの『融解GIG』の煌びやかに乱反射するノイズを味わっていた。



■バイト後、久しぶりにO館へ。小島信夫が何冊かあってざわざわした。じっくり吟味し迷った挙句『ハッピネス』という短編集を手に取り、その前から手に持っていた坪内祐三『ストリートワイズ』と共にレジへ。毎度ありがとうございますと云われ嬉しくもそわそわ。大好きな古本屋だ。


■電車の中で今日買った群像10月号の玄月『築四十三年』という短編を、巧みな視点変化に夢中になった読んだ『異物』という長編には及ばないなあ、なんて思いながら読み、家では楽しみにしていた保坂和志石川忠司の対談「小説よ、世界を矮小化するな」をソファの背もたれに腰掛けながら読んだ。保坂氏の小説の物語性を嫌悪する姿勢が改めてよくわかった。氏の小説のサラサラな肌触りは単に爽やかと形容すべきものではなく、強烈な意思によるものなのは明白なことで、それはあの執拗な風景描写からもわかる。

■対談の最後に小島信夫氏のDVDブックを出したいと話していて、それはそれはとても楽しみでならない。


■こうして書いている間に風呂の湯は溢れ、あわてて止めに走った次第である。