練り物

■毎週観ているMXテレビでやっている談志の番組に福田和也が出ていて吃驚。初めて声を聴いたのだが、思っていたより声が高くてなんだか肩透かしを食らった気分。そういえばあのお坊ちゃん(実際にそうだったらしいが)みたいな風貌だって氏の攻撃的で迷いのない文章からは想像できない。「顔文一致」という言葉があるけど、福田氏には当てはまらない。ということはきっと何人も書いているはずだ。ただ言葉を発する時に見せる目つきの鋭さには迫力を感じた。対談相手を萎縮させるには充分である。


多和田葉子『ペルソナ』を読んだ。ドイツに滞在する日本人の姉弟の話。作者も確かドイツ在住のはずでついつい作者の顔と主人公の姉をダブらせてしまう。姉と弟の間に横たわる微妙な関係。直接的でない遠まわしのエロティシズムを感じさせる書き方が好きだ。それにとにかく文章が楽しい。微妙に引っかかる言い回しがあるものの、それは鬱陶しくなく何か実験的な楽しさがある。それは以前読んだ彼女のひらがなだけの詩を読んだ時にも感じたことだった。


■今夜は一昨日飲んだXが昨日持ってきてくれた練り物のお裾分けを頂きながら晩酌をしたいと思う。