時計

■嬉しい知らせが届く。弟の野球部が勝ったという。次は神宮球場。観に行ける。おおいに楽しもうじゃないか。

■今日さっそく半ズボンを穿いたら、夜は冷えるじゃないか。スースーするのを感じて目を細めながら自転車を飛ばした。久しぶりに湯船に浸かろう。


■ふと壁の時計を見ると、蛆虫がうじゃうじゃと這いつくばっている。目を背けたい気持ちで一杯なのだが目を離すことができない。床に落ちてこないか心配だからだ。時計の文字盤の数字が消えていることに気づく。いや、消えたのではない。数字に生命が吹き込まれ、蛆虫になって這いずり回っているのだ。時計は壁に対して平行に掛けられているため、蛆虫共はもともと「6」があった部分、つまり円の下の部分に密集している。「時々」密集から離れるのもいて、大体「8」か「4」があった辺りまでは行くのだが、それ以上行こうとしても傾斜がきついようでスルスルと下に滑り、密集の中に戻る。時々秒針に引っかかって上に持ってかれるのもいる。が、結局は「9」があった辺りを過ぎると秒針に沿って真ん中に向かって滑り、下へ落ちる。
そんなことが延々と繰り返される。不毛だ。
ただ時間は確実に流れている。
今は何時だろうか。
二時二十八分。
針は動いている。